L'art de croire             竹下節子ブログ

2018年 07月 01日 ( 1 )

マクロンとローマ法王、フランスとアルゼンチン

6/26、マクロン大統領がローマ法王を公式訪問した。


ブリジット夫人は、プロトコルどおりの黒服だが黒ヴェールはつけず。


マクロンはイエズス会系の学校出で、イエズス会のフランシスコ教皇とは話が合う、と言われていた。

マクロンが通い洗礼を受けブリジットと出会ったアミアンの学校はフランスにある14のイエズス会学校の一つだ。

イエズス会にはプラグマティズムがある。

フランスにはその「二枚舌」を攻撃するtwitterのハッシュタグがあって、「偽善者」「風見鶏」などと揶揄されている。

「宗教改革」真っただ中の1534年創立の、ある意味で、カトリック教会の「バロック」戦術の空気の中で生まれた。「一方向」に集中するタイプの修道会ではなく柔軟に戦線を広げてきた。

リベラルな言説と保守的な姿勢を併せ持つ教皇はもちろん、「右でも左でもない」と称するマクロンのやり方もイエズス会的だといえなくもない。


フランシスコ教皇が会談した各国首脳でこれまで一番長かったのはオバマ大統領で52分だったがマクロンは57分で歴代一位だと、会見が終わって一分後にエリゼ宮が発表したんだそうだ。必死で時計を見ていたのだろうか。


恒例のプレゼント交換はマクロンがベルナノスの『田舎司祭の日記』の初版本で、教皇はメルケルなど他のヨーロッパの首脳にも贈呈するサン・マルタン(マルティヌス :自分の来ていたマントを剣で半分に切って貧者に分け与えた

)で「私たちはみな貧しいのです」との教皇の言葉とセットだった。


そしてラトランのバジリカ聖堂(これがローマ司教の聖座)の参事員という例の称号を与える典礼にもマクロンは参加した。

ポンピドー、ミッテラン、オランドはこれをスルーした。サルコジは大得意だった(サルコジから教皇へのプレゼントは献辞入りの自著だったそうだ)。


マクロンと教皇は最後にハグし合ってみなを驚かせた。

エリザベス女王とハグするくらいにあり得ないことらしい。


マクロンって、「善良な年配者」キラーみたいなところがあるとこれまでも思っていたが、本格的だ。


移民難民問題をめぐってイタリアとフランスが激しく対立しあっているタイミングだから、ここで弱者救済のヨーロッパ理念を共有する教皇とフュージョンしているのを見せることは政治戦略的に大きな意味がある。

前日に到着した時も、ヴァチカンのフランス大使館のあるボナパルト館ではなくイタリアのフランス大使館のあるファルネーゼ宮に泊まった。

朝食時は移民支援に熱心なフランスのカトリック信者のサン・エジィディオの代表者とブリーフィング、教皇との会談の後はフランス人枢機卿等と昼食、ラトランのセレモニーの後でヴァティカンのフランス人コミュニティを訪問。

ローマにあるフランス教区に属する二つの教会には行かない。


要するに、ヴァティカンにおけるフランスの影響力を増すこと、それによってヨーロッパの立て直しについてのフランスの発言力をバックアップさせることなどをねらったのだろう。


「主権国家」でありながらたアルゼンチン人の教皇や多国籍の大臣やら国民を擁するヴァティカンに歴史的に縁の深いフランスがそれを利用しないという手はない、ということだ。


その日の夜、ロシアのワールドカップの決勝トーナメントの一回戦でフランスとアルゼンチンが戦うことが決まったのは、また、別の話。


一次リーグの一位通過がすでに決まっていたフランスの最終試合は「退屈」で、一時リーグ敗退の危機にあったアルゼンチンは気合の入った勝利だったという。


私のアルゼンチン人の知り合いと言えばカルテットのヴァイオリニストの他には、もうずっと前に友人の連れ合いだった女性作家がいる。やはり亡命してやってきた彼女は、マラドナについての本を書いてそれが日本語で訳されたので私にプレゼントしてくれた。その後、いろいろなトラブルがあって友人にトラウマを残す別れ方をしたが、生命力あふれる「濃い人」だったのを思い出す。
[PR]
by mariastella | 2018-07-01 00:05 | 雑感



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
カテゴリ
検索
タグ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧