L'art de croire             竹下節子ブログ

2018年 07月 24日 ( 1 )

テレビで見たスリラー映画2本 カトリーヌ・フロは相変わらずすごい

先日、めずらしく、というかはじめて「TV映画」というものを2本続けて観た。


いわゆるTVドラマではなく、劇場公開のない映画で再放送だ。


最初の

J'ai épousé un inconnu『私は見知らぬ男と結婚した』


というスリラーの評判が良かったのでなんとなく見始めたのだ。

主演のデボラ・フランソワはダルデンヌ兄弟の『LEnfant』で18歳の母親を演じていたベルギー女優で私の好みだし、彼女の役が未成年相手の精神医というのが気になったのだ。

私のピアノの生徒の1人が中高生専門の心理療法士で、彼女と日ごろいろいろな話をしていることや、別の知人の15歳の息子が問題を抱えていてセラピー代わりにレッスンをしたこともあるからだ。

映画は拒食症その他の問題を抱えた子供たちを扱う療養センターのようなもので働くエマと同僚の紹介で知り合ったフリーライターのダヴィッドとの結婚式から始まる。その後、エマは何者かに命を狙われるのだけれどその度にダヴィッドが不在で、警察はダヴィッドを疑う。エマは妊娠中だが、夫の過去や家族のことをあまりにも知らないことに気づく。

殺人事件の90%は顔見知りによる犯行で、そのうち、男が殺された時の62%が妻による犯行、女が殺された時は93%が夫の手によるものだという統計を持ち出してエマを守ろうとする女性の捜査官が出てくる。

確かに、よくできたサスペンス小説を読んでいるように楽しみはしたけれど、パトリシア・マクドナルドの原作小説も多分同じようにおもしろいのだろう。

で、なんだか拍子抜けしていたら、コマーシャルもなくて突然次のテレビ映画が始まった。


La Tueuse caméléon『カメレオン殺人者』Josée Dayan Catherine Frot, Julie Depardieu, Jeanne Balibar)というものだ。


しかも、のっけから、仲良さそうにしていた女性の二人組のうち一人が相手をあっさりと撃ち殺してしまう。そしてその殺人者があのカトリーヌ・フロなのだ。

この人が主演であるだけで強烈な磁力に捕らわれて最後まで見てしまった。


3ヶ月後の次の犠牲者役がドゥパルデューの娘ジュリーで、この人も独特の持ち味がますます濃縮になり、殺人者の毒牙にかかるまでの2人の辛みが興味深い。


後で調べてみるとシナリオや構成などが結構批判されている映画なのだけれど、全体がリアルなのかシュールなのか分からない独特のリズムと雰囲気で、そこに、女性捜査官の執念のエピソードが何度も挿入されるのも始めは不自然に感じたけれど、後で納得できた。


そして、その捜査官を演じているのが、『バルバラ』の主演だったジャンヌ・バリバールだ。この人は、哲学者の父と物理学者の母を持ち、アンリ四世校からエコール・ノルマルに進学した超エリートなのに、その後もコンセルヴァトワールやコメディ・フランセーズなどでも活躍し、歌手としても活動するという多才な人だ。

倒錯者の役がはまるカトリーヌ・フロと正反対のタイプで、とにかく「かっこいい」に尽きる。最後にこの二人のそれぞれの闇が交錯するのがどきどきさせる。


これは実在の事件がモデルなのだそうだ。

この映画ではフランス人女性がイタリアに渡るのだが、実在の「カメレオン」は、イギリスに渡ったNY生まれのアメリカ人女性のシリアル・キラーで、最後はやはり追い詰められて2003年に60歳で自殺したので、その心の動きの真相は誰にも分らないままだったという。イギリスでは完全にブリティッシュのアクセントを習得し、カメレオンというのも彼女の自称だった。フロリダの女性判事がずっと捜査していたという。

この実話はwikipediaで読むだけでも驚きの展開(日本語では見つからなかった)なので、それに比べると確かに映画の構成は中途半端と言えないでもない。

でもカトリーヌ・フロ―の怖さが半端ではないので、最後までしっかり観てしまった。

結局夜9時すこし前から零時過ぎまで、スリラー映画を2本続けて観たことになる。捜査側の男と女の人間関係や、精神分析や心理療法のシーンなど微妙に似ているシーンもあるので、なんだか妙な気分になった。

これを書いている時点(2018/6/30)では二本ともネットで全編を視聴できることが分かった。フランス語が分かるカトリーヌ・フロのファンは試してみてください。



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by mariastella | 2018-07-24 00:05 | 映画



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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