(前の記事の続きです) A : ベネディクト16世はキリスト教精神を最も強調しました。ヨーロッパはエルサレムとアテネとローマの出会いであり、キリスト教が信仰と理性の関係を広げたと思い起こすのはいいことです。しかし今、偉大な神学者はいますか? 妥協的になり、司牧に特化してエコロジー色のある善意の言葉しか発しない。知的な狡さで、神学的怠慢です。やるべきことをやる人がいないから、キリスト教が思想に与えた影響を検証した『キリスト教の源流』(2018)以来、私がやっているんです。キリスト教側からは外野は黙ってろ、と言われるし、哲学側からは、私のやっていることは哲学者としての立場を裏切るものだという人がいます。 Sekko : これも分かる。「インテリ=左翼=無神論」のカテゴリー化が固定した時期が長すぎた。フランスの知識人はイデオロギーとしての無神論のベースで二元論的にカテゴリー分けされてきた。「キリスト教=女子供」で、教会に背を向けることが知的「自立」とされてきたのだ。日本人の私には、それがかえって、自由に動き回れる利点となった。何となく「東洋の哲学を身に着けながら知的好奇心によってキリスト教のフィールドワークをしまくるインテリ」という「別枠」で動けたからだ。 (続く) (お知らせ) サイトの掲示板が使えないままになっていました。新しいものを設置してもらう予定ですが、その過程で今まで私に見えなかったメッセージが読めました。慌ててお返事を書き込んだのですが、「海外ホスト」に規制がかかって書き込めませんでした。 この下に、送ることができなかったメッセージをコピーしておきます。 >>ここに書き込んでくださっていた小寄道さま、愚者さま、若生さま、どういうわけか私はここにアクセスできないままで、コメントを拝見していませんでした。 今回、管理してくださっている方に、新しい、使いやすい掲示板をつくっていただく予定です。 また、カトリック関係者や宗教に関心のある方などには、『カトリック生活』休刊と共に、連載していた『カトリック・サプリ』のブログ版『カトリック・サプリ2.0』を開設することにしました。サイトにはリンクしません。そこではコメントや質問もオープンです。https://jesus2024.blog.fc2. 遅きに失しますが、愚者さま、サンクト・ガーレン・マフィアというのは、1996-2013までスイスのSain-Gall司教区で始められたヨーロッパの司教、枢機卿の有志で始められた教会改革の会議グループです。 2005年から今のフランシスコ教皇を推していました。 2015 年になってTVで紹介されて知られるようになったそうです。 フランシスコ教皇就任と共に会議は解散しています。 マフィアと言うとなんだか右派のようですが、改革派です。 でも壁は厚く、おっしゃる通り、フランシスコ教皇の「改革」を阻む流れは強まるばかりです。 けれども、フランスの教会のスキャンダルもそうですが、困難な「自浄」を可能にしたのも「改革」の一部であり、カトリックの終焉、というより、なんだか初期教会の様々な試練を思わせて、期待しています。 サンクト・ガーレン・グループについてはSaint Gallen Groupで英語のwikiもありますのでどうぞ。 どうぞ。 若生さま、情報をありがとうございました。日本語のローマ字表記っていろいろ謎のままですね。 では、新しい掲示板が使えるようになってまたお会いできることを願って。<<< #
by mariastella
| 2024-03-04 00:05
| フランス
(前の記事の続きです)
Q : あなたのような、非キリスト教徒の哲学者がこれほどにキリスト教の神の概念に関心を持つのはなぜですか? A : この概念が少なくとも二千年もの間ヨーロッパの思想にまとわりついていたからです。アウグスティヌスからパスカルを経てキルケゴールまで、多くの思想家が神について考えを述べてきました。ヨーロッパ思想の地平に根付いているからです。キリスト教がルーツにあることをまるでなかったことのようにするのはヨーロッパの自己否定です。キリスト教から目をそむけたくありません。文化的アイデンティティの問題ではなく、より豊かな文化を求めているからです。私の世代(1951年生まれ)のひと世代のうちに、ヨーロッパを形作る核となった宗教はまったく人々の関心外に追いやられました。考えられる限り最悪の展開です。すっかり非キリスト教化した私たちの社会ではもう「神は死んだ!」と叫んでも、だれの耳にも入りません。この無関心は、精神の麻痺で、ヨーロッパの壊死を招きます。心配せずにおれません。それなのに教会は大して反応していない。どこかが知的にストップしているのです。 Sekko : 私はフランソワ・ジュリアンと同世代で、しかも、1968年五月革命以降の世界のフランスに住んだから、フランスにおけるキリスト教、特に伝統宗教であるカトリックに対する無関心に驚いた。 それでも、その気になればもちろん膨大な資料や共同体がいくらでもあるわけで、逆に、他の社会学者やら比較文化学者でさえ関心を持たない多くの文書や実態に自由にアクセスできた。特に、無関心どころか、私の世代の知識人にとっては、軽侮の念を抱く対象でもあった。私の世代が影響を受けたサルトルなどの哲学者は、積極的な反キリスト教、反宗教のスタンスだったし、彼らの親共産主義が傾いた後は、次に「脱構築」ですべてを相対化するタイプのポストモダンの時代に移ったから、キリスト教の出番はなかったというわけだ。 (続く)
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by mariastella
| 2024-03-03 00:05
| 宗教
『LA VIE』no.4092 (p74~77)に、おもしろそうな記事があったが読んでいる暇がないので、一問一答ずつここに要約おくことにした。
フランソワ・ジュリアンは、日本でも知られているようだ。1985-7年に日仏会館の研究員として日本に住んだこともあり、中国学者で比較思想家として有名だが、西洋中心主義のバイアスがかかったオリエンタリズムという批判もあるようだ。 そんな彼は2017年に『非-偶然 : アートと存在はどこから来るか?』(Dé-coïncidence. D'où viennent l'art et l'existence?, Grasset)という著作を皮切りに、脱-固形理論を展開している。(偶然の類似や偶然の出会いなどがいろいろな世界観を構築して一つの形を成して安定することがあるが、それを否定することで見えてくる可能性ということらしい。 その他に、中国思想の専門家として「自分はキリスト教徒ではない」と強調したうえで、「キリスト教の起源」だの「モーセか中国か : 神抜きで考える」などを出していて、今年になって、「神とは脱-固形である」を出した。 (Ressources du christianisme, Mais sans y entrer par la foi, Éditions de L'Herne, 2018, Moïse ou la Chine. Quand ne se déploie pas l'idée de Dieu, Éditions de l'Observatoire, 2022, Dieu est dé-coïncidence, Labor et Fides) 彼の「なぜ中国に神はいないのか?」という記事はネットで読める。 今回は、リベラルなカトリック雑誌がインタビューしたということで興味をそそられた。 フランス人には理解しにくいだろう彼の立ち位置は、私には想像できるので、確認したくもある。(続く)
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by mariastella
| 2024-03-02 00:05
| 宗教
(前の記事の続きです)
レクチャールームでの講演や実演(オーラの解読とか)もあまり面白くなかったので、あと一人の占い師を探していたらこの人にぶつかった。 タロットカードは、解釈によってすごく違ってくると思うので、純粋の霊感があると自称している人を物色していたのだけれど、この「いかにも」という感じのタロット占い師でも、まあいいか、と思った。 この手の占い師のお決まりでまず生年月日とファーストネームを聞かれる。 そして、「さあ、質問は?」と聞かれて、また迷う。質問を抱えずにタロット占いに金を払う人なんて私くらいかもしれない。パワーストーンのペンダント(今は買わなかったことを少し後悔している。いろんなタイプの友人や知人や子供たちに実験してみたいという好奇心が捨てられないからだ)を買うかどうかについてはもうどうでもいい気分になっていたからだ。 で、強いて言えばということで、再び、「今年に予定しているプランが順調に進むでしょうか」と聞いてみる。 タロット並べ。 「あなたのプランは認められます」 「いや、いろいろなプラン自体はもう認められているんですけれど、自分や仲間の健康状態やアクシデントで中止になるということはないですか?」(今思うと、去年も今年も、彼らがコロナ禍をどう予測してどう分析したかを質問して答えを分析してまとめるべきだった。) 「すべて成功します。(中央に置かれたカードを指して、)ただ、あなたの真ん中に大きな罪悪感があります。」 「えっ、私は別に悪いことしてないですが…。ああ、強いて言えば、昨今のニュースで戦場の様子などを見て、この地球にこれほどの格差があることに愕然とします。フランスも日本も、生まれてこの方、一度も戦場になってないこともそうですし、今も、TVでは物価高で食費も削るという人が紹介されているのに、のんびりこんなところに来て占いなんかしてもらっていること自体に罪悪感ありまくりです。そもそも幼い頃から家庭にも恵まれていたのでアベル症候群みたいなのはあって、他人からの嫉妬も意識してきました。でも、今はこの年になって、そういう恵まれた部分は他の人にお返しするためにあると割り切っているんですが…」 と私が言ったことに対して、共感的に答えてくれたので、私だけでなく周りの人の運命にも左右されますから、見てください、と言って、仲間や家族の写真などを見せることにした。 「ああ、写真を見てキャッチするのは私にはできないんですよ。でもカードを弾きましょう。この人のファーストネームは?」 で、私にもタロットを切るときにその人のことを念じるように言い、開いて並べるときに彼女は目を閉じてファーストネームを繰り返し続けていた。 2,3人について見てもらったが、まあ、全体的にポジティヴで問題がない。 「問題がある時はどういうんですか?」 「その問題に特化してタロットを並べなおして解決の方向を探りアドヴァイスします。」 いかにも魔女な雰囲気の人がさばさばして共感的なので助かった。 多分向こうも、こちらの様子、差し迫った問題を抱えていないな、とキャッチして武装を解いているのだろう。 どうしても優越側に立ちたい、感情的に支配したい、というタイプの占い師や霊能者なら、むしろイライラして攻撃的になる傾向があるだろう。 ま、いいや、という感じでサロンを後にした。 (今回のサロンのレポートはこれで終わりです。 もうすぐ創元社から発売される『オカルト2.0』という本に、他の「占いショッピング」のエピソードも載せています。合わせてお読みください。) #
by mariastella
| 2024-03-01 00:05
| フランス
次の占い師を探してぶらぶらしていると、あるスタンドにきれいなブックマークがあったので、「これ、もらっていいですか?」と聞いて、その人と話し込むことに。
このスタンドは、宣伝のためで、何かを売っているわけではない。 ネットで註文できる何冊かの本と、近日発売のオラクルカードの宣伝だ。 ブックマークもこのオラクルカードの宣伝。「あなたのヴェールを上げて光を注ぐ」ためのオラクルだそうだ。 スタンドの女性が監修したカードで、彼女の近刊の宣伝もある。2024/5刊。「上昇」という感じのタイトル。 日本語でもスピリチュアル界隈では「アセンション」という言葉が知られている。キリストの「昇天」も同じ言葉。 なるほど、だから、「売らんかな」という雰囲気も、自分を偉そうに見せようとする雰囲気も、「特別感」の強調もなく、自然体で、オープンなのだ。 で、栄養学からスピリチュアルやオラクルカードに至った体験を聞いてみた。 すると、私にとって驚くべきことが分かった。 彼女は催眠療法の博士号を持つ夫とともに、アネシィにスピリチュアルセンターを開いているのだが、その夫というのが、なんと、彼女と恋愛して教会を去った若い神父で、当時は、教会や教区だけでなく、スキャンダルとなってメディアをにぎわせた。「妻帯司祭」や「還俗司祭」は私の研究テーマの一つでもある。 でも、実際に出会ったのは、日本で日本人と結婚して還俗したフランス人元司祭一人だけで、その時は私の方がずっと若かったから、質問攻めにするような勇気などなかった。 エロア(トーラーの中で神を指す名前。本名かどうか聞かなかった)さんの話を聞いて、これはチャンスとくわしく話してもらうことにした。 彼女は幼い時からいろいろなことを感じる力があったけれど、思春期には封印していたという。 若くして、保護者タイプの男と結婚して男の子二人ができる。今18歳と13歳。 夫は彼女が自由に自分の道を探すことを許してくれた。 そのうち、少年たちの指導などで名が知られていたアドリアン神父と出会う。 今9 歳の、末の女の子を妊娠する。 つまり、単に、終身独身の誓願をしているカトリック神父と関係を持っただけではなく、「姦通」という宗教上の「罪」の状態になったわけだ。社会的に最悪な事態だ。 上の子供二人はまだ幼かったから彼女とアドリアンが引き取り、週末などに父親に会いに行った。 父親は再婚していず独り身のままだ。息子たちの世話もしてくれた。 今は、息子たちが大きくなったので「父親」のそばで過ごすことが重要だと思うので二人は父親と暮らしていて、彼女が会いに行ったり、彼らが時々来るというリズムになっている。 夫のアドリアンは、もともと人々に尽くし、霊的な救済を求めて神父になったくらいだから、彼女に共鳴して、催眠療法などいろいろな資格を取って、彼女といっしょにUNISPIというセンターを立ち上げた。特に、女性の魂の「覚醒」を目指すケアを幅広く手がけるようになった。 ネット上で彼らの写真が簡単に拾える。 なかなかすてきな男性だ。 このサイトには彼女と彼のプロフィールが載っていて、彼が神父だったということは隠してはいない。 彼らのセンターでは瞑想、座禅、ヨガ、森林散歩などで、滞在型のリフレッシュができる。 彼女のリラックスして幸せそうな雰囲気が、カップルの絆の強さと協力のハーモニーから来ているのだと想像できる。 こういうのが「運命の出会い」なんだろうなあと思う。彼の方にもインタビューしてみたい気分だ。 彼女は私の話も聞きたがったけれど、質問をしに来た人がいたので私は遠ざかった。 話のお礼と別れのあいさつするためにまた寄ろうと思ったけれど、その後、ずっと人がいたのでそのままになった。 いろいろな人がいるものだ。(続く) #
by mariastella
| 2024-02-29 00:05
| フランス
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